僕が車業界に居たときに感じていたのは、技術だけではなく、資格の有無で、できる仕事の幅が大きく変わってくるという点です。
整備や物流など、幅広い車の業界では、資格を持っていると評価も上がりますし、転職を考えた際の大きな武器にもなります。
しかし、資格というと難しく考えてしまい、勉強が難しそう、お金がかかりそうと諦めてしまっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、車業界で持っていると強い資格の特徴から勉強方法まで、網羅的に解説します!
危険物取扱者

危険物取扱者ってどんな資格?
ガソリンスタンドや整備工場、倉庫などで「引火性のある危険物」を扱うために必要な国家資格です。
とくに、乙種第4類(通称:乙4)は、ガソリンスタンドをはじめとした、ガソリン・軽油・灯油などを取り扱う現場では定番の資格として知られています。
なぜ必要?どこで活かせる?
ガソリンスタンドでは、危険物取扱者の資格を持った人が常駐していなければならないと消防法で定められています。そのため、乙4を持っているとシフトにも入りやすく、現場での信頼度もアップします。職場によっては、乙4の資格保有で手当てが付くケースもあるようです。
また、カー用品店や運送会社、整備工場でも、洗浄剤や燃料などの可燃性液体を扱う業務があるため、取得しておくと活用の場が広がります。
試験区分と合格率
危険物取扱者には以下の3区分があります。
| 甲種 | すべての危険物に対応(理系大卒などの受験条件あり) |
| 乙種 | 1〜6類に分かれ、なかでも第4類が最も一般的 |
| 丙種 | 取り扱える物質は限定的(灯油・軽油・潤滑油など) |
なかでも乙4は最も人気が高く、受験者全体の約7割を占める資格。特に指定が無ければ、「危険物の資格=乙4」と考えても良いでしょう。
合格率は年度によって異なりますが、おおむね30〜35%前後で推移しています。内容は暗記中心の筆記試験で、独学でも十分合格を狙えます。
取得方法・費用の目安
- 試験実施団体:一般財団法人 消防試験研究センター(全国で実施)
- 受験料:5,300円(乙種/2025年時点)
- 勉強時間の目安:30〜50時間(過去問中心で対策可能)
市販のテキストやスマホアプリを活用した独学での勉強で、働きながらでも効率的に合格を目指せます。
僕の現場体験|店長になるなら乙4は必須
僕がガソリンスタンドに勤めていた頃、店長になるにあたって乙4を取得しました。
法令上、店舗には危険物取扱者の有資格者が常駐していなければ営業できないため、スタッフの中に1人でも乙4持ちがいることは非常に重要なんです。
だからこそ、乙4は現場で頼りにされる資格でもあります。実際、僕自身も資格取得と同時に店長に昇格したので、責任者を目指すなら持っておきたい1枚だと感じています。
自動車整備士(2級/3級)

資格の概要
自動車整備士は国土交通大臣指定の国家資格です。3級は「日常点検・軽整備が主担当」のエントリー資格、2級は「エンジン脱着や車検整備まで扱える」中核資格という位置づけとなります。
ディーラーや民間車検工場では2級保有者が現場の主戦力となり、3級保有者はタイヤ・オイル交換、軽微な故障診断などで経験を積みながら上位級へ進むのが一般的です。
受験資格と実技免除ルート
| 区分 | 受験資格(学科試験を受ける条件) | 実技試験が免除になるルート | 代表的な進み方 |
|---|---|---|---|
| 3級 | A:実務経験 ・機械/電気系学科卒=6か月以上 ・その他の学科卒=1年以上 | 二種養成施設(整備振興会の夜間講習・90h以上)を修了すると、修了後2年間は実技免除 | ガソリンスタンド勤務1年→夜間講習→学科のみ受験 |
| B:一種養成施設 3級課程(高校自動車科・専門学校1年など)を修了 | 修了と同時に実技免除(2年間) | 専門学校1年課程→卒業後すぐ学科のみ受験 | |
| 2級 | A:3級合格+実務3年以上 (短縮:機械系大卒1年6か月/高卒2年)※国土交通省告示第357号 | 二種養成施設 2級課程(90h以上)修了で実技免除(2年間) | 3級→整備工場で経験→夜間講習→学科のみ受験 |
| B:一種養成施設 2級課程(専門学校2年など)を修了 | 修了と同時に実技免除(2年間) | 専門学校2年課程→学科のみ受験 |
二種養成施設は、経験者向けの短期講習のため、入校時点で上表の実務経験要件を満たしていることが前提です。
試験内容・受験料(2025年度)
| 区分 | 試験科目 | 試験時間 | 受験料 |
|---|---|---|---|
| 3級 | 構造機能・整備法・保安基準(四肢択一) | 1時間45分 | 学科 7,200円 実技 14,000円 |
| 2級 | 上記+故障診断装置が加わる(三科目) | 2時間15分 | 同上 |
合格基準は科目ごと60%以上。出題形式はマークシート式です。
また、受験の申請は、日本自動車整備振興会連合会(JASPA)にオンライン申請、または書面提出でおこないます。
最新の合格率(2024年度第2回・全国平均)
| 種目 | 合格率 |
|---|---|
| 2級ガソリン | 86.2 % |
| 2級ジーゼル | 94.3 % |
| 3級ガソリン | 68.4 % |
| 3級シャシ | 67.4 % |
注:年度や試験回によって振れ幅があり、直近では2級の合格率が上昇しているようです。
学習時間と費用の目安
| 区分 | 学習時間 | 想定コスト | 効率化ポイント |
|---|---|---|---|
| 3級 | 200〜300時間(独学1〜3か月) | テキスト+過去問=約1万円 | 過去5年分の学科問題を反復し、法規を暗記 |
| 2級 | 600〜900時間(専門学校2年) | 学費200〜300万円+試験料 | 実務と並行する場合は夜間講習を活用 |
現場での活かし方とキャリアパス
- ガソリンスタンド併設工場:3級で日常整備、2級で12か月点検・車検の受託が可能。
- ディーラー・指定整備工場:2級取得から自動車検査員を取得すると検査ライン主任や工場長候補に昇格しやすい。
- 運送・バス会社:2級と運行管理者をセットにすると車両管理部門への登用が有利。
資格手当は、3級で月5,000円前後、2級で月10,000円前後が目安です。大手はさらに上乗せがある場合もあります。
未経験のあなたに。ワンポイントアドバイス
ガソリンスタンド勤務で整備経験がゼロなら、夜間の二種養成施設を使って3級を最短6か月で取得しましょう。
実技試験が免除されて学科だけに集中できるから独学より効率的です。2年ほど現場で経験を積んで2級課程に進めば、ディーラー整備士への転職や月1万円以上の資格手当も十分射程圏内。
乙4と組み合わせれば「給油・整備・危険物管理」がワンストップでできる若手として重宝されることも。
保険募集人(一般課程)

資格の概要
保険募集人資格は、生命保険や損害保険などを取り扱う際に必要となる業界共通の必須資格。基本的な一般課程に合格すれば、自動車保険・火災保険・医療保険・死亡保険など、主要な保険商品の販売が可能になります。
特にディーラーや整備工場では、車両販売や車検時に保険もあわせて案内できるよう、スタッフに資格取得を促すケースが増えています。
取得の流れと試験概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格名 | 保険募集人 一般課程(生命保険・損害保険) |
| 実施団体 | 生命保険協会/日本損害保険協会 |
| 試験方式 | CBT方式(専用テストセンターでのPC受験) |
| 試験時間 | 各科目 40分(マークシート形式) |
| 合格基準 | 正答率 約70%以上(明示) |
| 受験料 | 生命保険:2,500円(税込) 損害保険:単位ごとに異なり1,900円〜3,900円程度 |
| 試験日程 | 原則として 月~土曜、祝日と年末年始を除く(会場により異なる) |
| 申込方法 | 所属保険会社・代理店経由(原則として個人申込不可) |
※「損保一般試験」は基礎単位+商品単位(自動車・火災・傷害)などの組み合わせで受験します。
※「生命保険一般課程」には単位制はなく、1回の試験で完結します。
参考:損保一般試験|受験手数料(単位数別)|日本損害保険協会
難易度と学習時間の目安
合格率は公表されていませんが、業界関係者向け資料では80〜90%程度とされています。試験は〇×形式のCBT(パソコン画面で回答)で、基礎知識を押さえれば十分に対応可能です。
一般的な学習時間の目安は 10〜15時間前後。公式テキストと過去問題を使い、1週間程度の学習で合格できる人がほとんどです。
現場での活かし方
自動車整備工場・ディーラーでは、自賠責保険や任意保険(自動車保険)を取り扱うために必要となる資格のため、法人によっては資格手当(月3,000〜10,000円)を支給しているところもあります。
資格取得後も 法改正に対応した定期研修(eラーニングなど) が義務化されており、保険提案の実務力も向上していきます。
「整備+保険+接客対応」ができる人材として、顧客からの信頼を得やすくなるのも大きなメリットです。
未経験のあなたに。ワンポイントアドバイス
整備×資格、接客×資格で掛け算で自分の価値を向上させたいって思ってるなら、この資格は間違いなく武器になります。
とくに任意保険のことをちゃんと説明できるようになると、ディーラーでも整備工場でも頼れる存在として評価されるのは間違いなし。試験は学科だけ、比較的短期間で取れる資格だから、まずは軽い気持ちで挑戦してみてもよいかも!
h2-4 運行管理者(貨物)

資格の概要
運行管理者(貨物)は、一般貨物自動車運送事業などでトラックの運行計画・安全管理を統括する国家資格です。
営業所ごとに 29 台以下なら 1 名必置、30 台を超えるごとに 1 名追加 で選任が義務付けられており、運行管理者が不在の状態で営業をしている場合、事業所が行政処分の対象になります。
また、直近でニュースを騒がせた、日本郵便での点呼の虚偽記録を発端とした運送許取消しに当たっては、運行管理者211人が資格を取り消されています。このことからも、運行管理者にとって法令遵守がいかに重要かが分かります。
参考:日本郵便の運送許可取り消し 総務省も最も重い「監督上の命令」処分|朝日新聞デジタル
受験資格と基礎講習ルート
| 区分 | 受験資格(いずれか) | 備考 |
|---|---|---|
| A:実務経験 | 運行管理補助者として 1年以上 の実務 | 点呼・運行指示書の作成補助など、事業者の証明が必要 |
| B:基礎講習修了 | 国交省認定 基礎講習(3日間・16h) を修了 | 受講料 8,900 円前後。実務経験がなくても受験可 |
試験概要・受験料(2025年度)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 公益財団法人 運行管理者試験センター |
| 試験区分 | 貨物/旅客(ここでは貨物) |
| 実施回数 | 年 2 回(3 月上旬・8 月上旬〜下旬) |
| 方式/出題数 | CBT 方式・四肢択一 30 問 |
| 試験時間 | 90 分 |
| 合格基準 | 総得点 60 %以上(18 問) + 分野別下限あり |
| 受験手数料 | 6,000 円(非課税)+システム利用料 660 円(税込) |
最新合格率(令和 6 年度〈2024〉第 2 回)
| 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|
| 20,755 人 | 7,084 人 | 34.1 % |
近年の合格率は30〜35%前後で推移し、平均すると3人に1人が合格するレベルです。比較的難易度は高めと言って良い資格ですので、しっかりと準備をしておくようにしましょう。
学習時間と対策のコツ
| 受験者の立場 | 目安学習時間 | 主な教材 | 重点ポイント |
|---|---|---|---|
| 初学者 | 60〜80 時間 | 公式問題集+過去問 6 回分 | 道路運送法・労基法・点呼実務 |
| 補助者経験者 | 40〜50 時間 | 過去問中心 | 労務管理の計算問題、車両管理数値 |
| 基礎講習受講者 | 30〜40 時間 | 講習テキスト+過去問 | 講習配布資料のキーワード暗記 |
過去問の繰り返しと、条文キーワードの暗記が合格への近道です。
現場での活かし方・メリット
緑ナンバーのトラックなどを運行している営業所には、運行管理者を安全管理責任者として常駐させておく必要があります。
安全管理責任者が不在の場合、ナンバー停止などの処分対象にもなるため、運行管理者の資格保有者は重宝されます。そのため、資格手当も比較的手厚く、月に1万~2万、大手の場合には3万円支給される例もあるようです。
整備業界でも、レッカーやロードサービスで緑ナンバーを運行している事業所の場合、運行管理者は必須。転職の役に立つこと間違いなしの資格です。
未経験のあなたに。ワンポイントアドバイス
整備業界はもちろん、トラック業界や物流系企業で長く働くなら、運行管理者(貨物)+ 2 級整備士+ 乙 4 の「三種の神器」を目指しましょう。
配車・整備・危険物の知識・資格がそろえば、現場と管理をつなぐキーパーソンとして重宝されます。まずは 3 日間の基礎講習 を受けて受験資格を確保して、試験に挑戦してみましょう!
玉掛け技能講習 + クレーン運転士

玉掛けとクレーンの違い・関係性
| 役割 | 主な業務 | 必要になる場面 | 法令根拠 |
|---|---|---|---|
| 玉掛け作業者 | 荷をワイヤ・ベルトで吊り具に掛け外しし、合図でクレーンを誘導する段取り役 | つり上げ荷重 1 t 以上のクレーン作業すべて | 労安則 219 条 |
| クレーン運転士 | クレーンを実際に操作し荷を移動させる運転役 | ラフテレーンクレーン、車両積載形トラッククレーンなど | クレーン則 3 条ほか |
1 t 超の荷を吊る作業では、「クレーン運転士+玉掛け」の 2 名体制 が必須。両資格を持っておくと現場で即戦力になります。
セット受講が便利
玉掛けとクレーンの資格は両方持っていると便利。そのため、教習所では 「玉掛け3日」+「小型移動式クレーン3日」など、セットのプランが用意されています。(例:長野労基協会:5日間 59,400 円(税込・教材込))
セット受講ではなく別々に資格を取得する場合、玉掛け修了者がクレーン講習を受けると学科4 h免除で時短・割安になるため、先に玉掛けを取ってからクレーンの順が鉄板ルートです。
講習日数・費用・実技内容(代表例)
| 講習 | 日数/時間 | 受講料の目安※ | 主な実技 |
|---|---|---|---|
| 玉掛け技能講習 | 3日 19 h(学科12 h+実技7 h) | 約 25,000 円前後(テキスト代込) | フック選定・掛け外し・合図 |
| 小型移動式クレーン技能講習<br>(1〜5 t) | 3日 20 h(学科13 h+実技7 h) | 約 43,000 円前後 | ジブ伸縮・旋回・定点着地 |
| セット講習(例) | 5日 37 h | 59,400 円 | 上記2科目を一括実施 |
| 国家免許:クレーン・デリック運転士<br>(5 t超) | 学科1日/実技1日(事前講習は任意) | 学科 8,800 円+実技 14,000 円(受験料) | ワイヤ掛替え・鋼板反転・死角操作 |
※受講料は教習所や地域、会員割引の有無で ±5,000 円程度変動します。
合格率(最新:令和6年度)
| 区分 | 学科合格率 | 実技合格率 |
|---|---|---|
| 玉掛け技能講習 | 約98 % | 約96 % |
| 小型移動式クレーン技能講習 | 約99% | 約95% |
合格のコツ
玉掛け・小型移動式クレーンは、いずれも講習+終了考査のため、受講完了すればほぼ合格することが可能。「修了考査(筆記+実技)」で6割以上正答すれば修了証が交付されます。
実技は横振れ 10 cm 以内を目安に、勤務先などで練習できる場合は、目印テープで位置決めをして練習すると減点防止になります。
現場での活用事例と単価アップ
| 職場 | 兼任例 | 収入メリット |
|---|---|---|
| 整備工場(大型整備ライン) | エンジン載せ替えを自操+玉掛け | 資格手当 月 3,000〜5,000 円 |
| 解体・建機レンタル現場 | ユニック車を自操→玉掛けで荷外し | +3,000 円/日 の現場単価 |
| 物流センター | トラッククレーンで重量物降ろし | 人員効率化で昇給条件に直結 |
未経験のあなたに。ワンポイントアドバイス
玉掛けと小型移動式クレーンは 吊り上げのゴールデンコンビ。まず3日で玉掛けを取り、そのままクレーン講習に進めば学科も実技も半分は既習範囲じゃ。整備工場でも解体現場でも「2資格持ち」は重宝されるけぇ、5日パックに挑戦してみんさい!
まとめ|資格は掛け算で広がる武器になる
自動車業界は、資格があると掛け算式にできる仕事の幅が広がります。
例えば、整備士資格×運行管理者資格を取得することで、ロードサービスをやっている事業所やタクシー会社などでも重宝されます。
資格というと難しく考えてしまいがちですが、玉掛けや移動式小型クレーンのように、ほぼ講習だけで取れる資格も少なくありません。まずは自分にも取れそうと思った資格から気軽に挑戦してみるのも良いでしょう。
資格を掛け算式に活用して、自身のキャリアアップや転職に役立ててみてくださいね!
出典:自動車整備士を希望されるみなさんへ|JASPA公式サイト